シンガポール、マリーナベイ・サンズのカジノライセンスを3年延長

丸山けいた

マリーナベイ・サンズのカジノライセンスを3年更新|拡張計画も本格始動へ
シンガポールのギャンブル規制機関(GRA)は、マリーナベイ・サンズ(MBS)のカジノライセンスを3年間更新すると発表しました。
新ライセンスは2025年4月26日から有効となり、MBSは引き続き営業を続けます。この決定は、GRAがMBSのコンプライアンス状況と運営内容を慎重に審査したうえで下されたものです。
シンガポールの厳格な規制のもと、安全かつ適切に運営されていることが確認し、ライセンス更新を通じて、GRAは「MBSがシンガポール社会に引き続き良い影響を与えること」を期待しています。
MBSは、シンガポールのカジノ産業の中核を担う存在で、観光ブームと10億ドル規模の拡張計画を背景に、今回の動きはラスベガス・サンズ社にとっても大きな意味を持っています。
厳しい審査を経た更新
今回の3年間ライセンスは、シンガポールの「カジノ管理法」で認められる最長期間です。
GRAは、責任あるギャンブル推進、マネーロンダリング防止、運営基準の遵守といった項目について、MBSを徹底的に審査し、その結果、MBSは第45条の要件をすべて満たしていると判断され、2028年4月26日まで営業が認められることになりました。
シンガポールが経済的利益だけでなく、社会的リスクにも配慮している姿勢が改めて浮き彫りになりました。
X(旧Twitter)では、@YogonetNews や @GlobalGamingBiz などがこのニュースを取り上げ、MBSの45億ドル拡張計画とあわせて報じています。
なおシンガポール政府は、少なくとも2030年まではMBSとリゾート・ワールド・セントーサ(RWS)の2カ所のみをカジノ営業拠点として維持する方針です。
世界屈指の観光拠点へ
マリーナベイ・サンズは、単なるカジノ施設にとどまりません。世界的な観光拠点として、圧倒的な存在感を放っています。
2024年10〜12月期には、リゾート全体の収益が前年同期比7.2%増の11億4000万ドルに到達。そのうち、カジノ事業の売上は7億9200万ドル、前年比6.9%増という好調ぶりでした。
国境再開を受けて観光客が戻り、2024年には1650万人がシンガポールを訪れています。中国、インドネシア、インドからの訪問者が特に多く、MBSも観光復興の立役者となっています。
この流れを受け、ラスベガス・サンズは10億ドル規模の拡張計画を正式に発表。2025年7月には着工式が予定されています。
第1段階では、1万5000席の大型アリーナ、11万平方フィートの会議スペース、570室の高級スイートを新設。4番目となるホテルタワーの完成は、2031年1月を見込んでいます。
MBSはこのプロジェクトのため、90億ドルの資金調達も完了しており、長期的な成長戦略を着実に進めています。
カジノ以外の魅力強化も
マリーナベイ・サンズは、カジノ収益に依存しすぎない経営戦略も進めています。
「MBS 2.0」プロジェクトでは、2025年秋に新ホテル「The Laurus Hotel」や、リニューアルされた「シンガポール・オーシャナリウム」がオープン予定。
さらに、プレミアムショッピングエリア「WEAVE」も年末に開業し、ファミリー層やビジネス客を惹きつける狙いです。
ライバル施設のリゾート・ワールド・セントーサも拡張を進めており、両リゾートは政府の統合型リゾート(IR)構想に沿った動きを加速させています。
工事は2031年まで続きますが、MBSは厳格な規制順守に自信を見せており、今後も順調に進められる見通しです。
シンガポール独自のカジノ運営モデル
シンガポールのカジノ産業は、世界でも類を見ない独自モデルです。
ライセンスは2施設に限定され、ターゲットは富裕層中心。大衆向けギャンブルの拡大を抑制しながら、観光収益を最大化しています。
また、入場料制度や厳格な責任あるギャンブル対策を通じ、社会問題のリスクを最小限に抑えています。
この運営モデルは、周辺国でも注目されています。たとえばタイではカジノ合法化に向けた議論が進んでおり、ラスベガス・サンズなど海外大手が関心を寄せています。
シンガポールが先行して確立した厳格な法制度と規制は、今後もアジア市場における優位性を保つでしょう。
まとめ:日本のIR開業を控える今、参考になるモデルに
今回のマリーナベイ・サンズのライセンス更新は、観光振興と経済成長に向けた強い自信を示すものです。
新たな施設拡張と高額消費層の誘致戦略により、MBSは2028年以降もシンガポールの象徴的存在であり続けるでしょう。
こうしたシンガポールの取り組みは、日本のランドカジノ建設でも参考になるはずです。
日本では大阪IRをはじめ、今後統合型リゾート(IR)の開業が予定されていますが、経済効果と社会的リスクのバランスをどのように取るかが大きな課題となっています。
ギャンブル依存対策を重視しつつ、観光立国としての成長戦略を描く──。シンガポールの成功モデルから学ぶことは多いと言えそうです。